ちいさな襟
歌集
読書灯ともしてできる手暗がり数行ごとにずらしてゆけり
駅ごとに駅名を言う子供たち降りて子供のにおいが残る
ああなんてきれいと雪にふれるのはいつかはやむと信じているから
ともだちは少なくていい もういちど霙のなかのさくら見に行く
モノクロの洋画の中のタイピストちいさな襟のブラウスを着る
日常のかすかな気づきを掬いあげる感受性。文体の淡さ、繊細さ。そこに一人の内面のとらえがたい機微が擦り出される。はかないのに、くっきりと手渡してくれる何かがある。希いを秘めた、どこかしら箴言性を帯びた余韻、とでもいえようか。・・・花山多佳子「帯」より
四六判上製
204ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984730