白
歌集
開業医の妻となり、二人の息子も医者となり、孫らも自立したいま、著者の心の色を彩った世界をあらためて確認する一集である。平明な表現のなかに、輪唱のように響いてくる言葉に、母の形見の帯をつよく締め白足袋を履いた一人の女性像が立ち上がる。やさしい夫に常に寄り添い、松田常憲生誕の地・秋月をこよなく愛する、たおやかな心ばえがうつくしい。・・・・塚本諄「帯」より
唐突に開業医となりし夫われはその妻夜も昼もなく
重きこと一つ抱へし旅なれば足袋の白きをしかと履きたり
久びさに夫と見上げし空に虹その半円を鳥の越えゆく
常憲師もわれも母校は同じにて垣根のからたち百年薫る
曇り空なべてを一つの色となす深呼吸一つそれも平安
四六判上製
202ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984853