僕は行くよ
歌集
土岐友浩の歌は、怯(ひる)まずに「時代」と「事件」に真向かう。永劫のような歌史の果てに展(ひら)かれてある現世の、ライトブルーの汀(みぎわ)に寄せくる、その歌の姿を見よ。われらの書く一語一語は瞬間の記憶、漣(さざなみ)のような刹那の繰り返しだ。荒(あら)らげず、みずからの口語を歌に託す土岐友浩の声の、驚くべき優しさ。まだ完了してはいないから過去は棄てない、でも僕は行くよ、と彼は言う。その背に、さよならとも言わず手を振る、それが土岐友浩の歌を読むわれらの姿だ。・・・稲川方人「帯」より
「記憶もまた、一種の生きものなのだろう。」(あとがきより)
過ぎ去った平成の記憶を掘り起こし時代精神の深層にせまる「落下するヒポカンパス」、敬服する知識人の死を悼む「黒猫」など270首を収録。
現代歌人集会賞を受賞した前歌集『Bootleg』に続く、過去と同時代に鋭く対峙した第二歌集。
四六判変型並製
176ページ
2600円(税別)
ISBNコード
9784961984914