ひかりの花束
歌集
柔らかき手で両耳をふさがれたやうな静けさ雪の降る夜は
傾けるコップの尿はあたたかし排泄するとは命のかがやき
白き花こまかな花が好みなる私の生き方たとへばなづな
レセコンに「死亡」打ち込みカルテ閉づ幾人の生を失ひ来しか
ため息はつかぬと決めたその日から空き瓶に咲くひかりの花束
風のなき庭のレモンの葉が揺れぬ亡き父がいま枝に触るるか
医療・薬剤の現場で働き、その仕事を愛するかたわら、三木裕子さんは家族をこよなく大切にしている。また植物や動物など自然界への愛着も深い。人生を歩みつつ出会ったさまざまな光と影を、大らかな愛情と繊細な感覚で詠み取った作品は、この世の煌めきと温かさを湛え、そして仄かな哀しみを帯びている。・・・高野公彦「帯文」より
四六判フランス装函入
240ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984969