居其可在處
歌集
浅瀬の石ひとつに一羽と約せるかユリカモメなべて陽に向き静けし
アララギに拠って作歌してきた四十年の歳月が、確かな写生の目を涵養してきたことは紛れもない。ただ写実一辺倒ではなく、そこはかとないユーモアが潜むのは、ひとえに皇さんの個性によるのだと思う。
安保法に御名(ぎよめい)御璽(ぎよじ)記すは挫折ならむ慰霊ひとすぢの一生は成らず
数こそ多くはないが、こうした社会詠が一集を引き締める。社会情勢をしかと見届けんとする姿勢は、自身に連なる幼き者たちの未来を慮ってのことでもあるだろう。
カバー絵を装幀を本文に挿まれる絵や写真を、子や孫たちが分担、そして夫を含めたそれぞれが歌材としてしっくり収まった。いまの世に幸せな形で出来上がった「私家集」と呼ぶべき一冊。・・・永田淳「帯」より
A5判上製
310ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861985621