百歳の母・ほたるの宿
歌句集
亡き母の四十九日もはや過ぎて小さな旅に行つてみようか
妻と母、二人のかけがえのない女性を失った喪失感がこの歌集の特徴であるが、歌集がこの作品で終わっていることに読者としては少しほっとする。「小さな旅」、小旅行のことであろうが、心の旅として考えてもいいかも知れない。島田さんは思い出だけに生きるのではなく、二人の居ない世界を自分の足で、自分の心で生きていこうとしている。多分、その支えとなるのが短歌であり、俳句なのだろう。そのことを私は心から応援していきたいと思う。・・・三井修「跋」より
木守柿ひとつ遺して母逝きぬ
新年を迎えた日、母の臨終に遭遇したのだろう。来年の収穫を祈って残した木守柿が、木の天辺に濃い色のまま残っている。たったひとつの木守柿に母逝去の無念が伝わってくる。妻追悼の思いと百歳の母との日々の暮らしは、周囲の自然と風光とともにあった。その暮らしと自然に触発された自然詠がこの悲しみの世界を支えている。・・・井上康明「跋」より
四六判並製
234ページ
2000円(税別)
ISBNコード
9784861985935