緑色の人
歌集
王紅花、本名松平美津。若き日に《水につばき椿にみづのうすあかり死にたくあらばかかるゆふぐれ》と歌い、《窓外は暮れ、青炎のごと燃ゆる薔薇幾つ風に揺れてくづれて》と絶詠した、歌人[画人]松平修文の妻。鬱蒼の森のアトリエ、和(あたた)かく虔ましくいつも画人の傍にいた。王紅花は、喪失の悲しみを《青畑の青麻雛罌粟(あおそひなげし)きそいたち揺れ交わしげに辛き涙よ》と歌った。だが、いま、青の悲しみは、風や鳥の声や雲の色と変じ、夫君との在りし日を呼び寄せる。本歌集は、追悼歌集『窓を打つ蝶』に次ぐ、清冽な涙を湛えた碧玉集である。《網戸の穴にきみが貼りたる紙の蝶日の差せば床に影は遊ぶも》・・・福島泰樹「帯」より
四六判上製
234ページ
2600円(税別)
ISBNコード
9784861986222