よもぎ野
歌集
『よもぎ野』を読んでいると心身ともに拓けていくような解放感があった。短歌は往々にして狭いところ、微妙な機微や理に落ちやすい。それは短歌で詠まれる自然が人間の側の心情を投影しやすいからでもあろう。自然と心情がこまやかに絡み合って、そこに意味が生まれる。
森さんの歌にはそういう絡みがない。北海道の自然は人間の前にそれだけ圧倒的なのだろう。
おほかたは空気のやうな雪が降る時間をかけて天から届く
流氷が接岸してゐむ夕刊を配る人らの額が赤い
呼吸が広やかになっていくような歌集である。・・・花山多佳子「解説」より
四六判上製
198ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984549