鯖街道
歌集
歌には、作者の〈人となり〉が表れるとはよく言われることである。私は上田善朗さんを長く知っているが、本歌集『鯖街道』の歌を読みつつ、何度もその風貌を思い浮かべ、思わずニコッと、あるいはニヤリとしてしまうのであった。上田善朗さんは、風貌も物腰もまことに温和で、対面するものを和ませてくれるが、人を見る目の穏やかさとやさしさ、動物や日常の生活のなかにあるさまざまの景に対する懇ろな視線は、時に涙ぐましくなるほどである。時に鋭い批判の針を突きさすが、多くの歌に漂う、そのそこはかとないユーモアは、世界に対するときの余裕からきているのだと、本歌集を読んで改めて気づかされたのである。
その人に歌があって良かったと、自ずから納得させてくれる歌人が上田善朗である。
よく見れば見れば見るほど省略のゆき届きたる海鼠なりけり
・・・永田和宏「帯文」より
A5判上製
208ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984495