ふた束の水仙
歌集
温暖湿潤な日本の風土に一三〇〇年の命脈を保ってきた短歌を、ニューヨークで綴り続ける力の源泉はどこから来るのだろうか。
上弦の月見上げれば戦ある世を見下ろされてるような文月
アメリカの夕空に上がる半月は、ダンバーさんにとって「上弦の月」としか表現しようのないものなのだろう。一首は「戦」と「文月」の「文」とを対置させているのだが、そういった理屈を抜きにして「文月」と書く内的必然が働いたに違いない。「半月」「七月」よりももっと日本の体温にちかいこのような単語を選ぶ作歌活動は、アメリカの市民権をもつダンバーさんが遠い日本を身近に引き寄せる引力のようなものなのだろう。
故郷の穏やかに過ぎし休日を文字にするべく鉛筆削る
・・・「帯」より
四六判上製
200ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861984075