大きな傘
歌集
打刃物問屋を閉ぢし亡き父が握り鋏に刻みし「多惠子」
月仰ぐ児のうつとりと呟きぬ「私を迎へに来るかもしれない」
左手は右手の過誤を受けやすし佐(たす)くる者が罪負ふやうに
落椿掃かず萎るるのみ拾ふ法然院にそを見し以来
老といふ大きな傘が降りて来てわれを誘ふ 迷はず入れ
どこか危うく繊細な感性としたたかな理知の綯い交ざった、佐藤多惠子さんの歌世界は、底知れぬ深みと多彩の魅力をもつ。
堺という特殊な歴史と文化の都市で、生粋の堺人として身に積んできたものの魅力でもあろうか。
端正な韻律・精確な叙法に詠み出される充実の第二歌集を、じっくり味わって頂きたい。・・・藤井幸子「帯文」より
四六判上製
216ページ
2500円(税別)
ISBNコード
9784861983702